Interview

eスポーツを通して広がる
地域活性の可能性

近年よく耳にする「eスポーツ」という言葉。みなさんはどのようなスポーツかご存知ですか?「eスポーツ」とは、エレクトロニック・スポーツの略で、PCなどの電子機器を用いて行う娯楽や競技、スポーツ全般を指し、その種目は格闘ゲームやパズルゲーム、レーシングゲーム、スポーツゲームなど、多岐にわたります。

「沖縄市ITワークプラザ」には、高速通信環境が整備されているとともにゲーミングPCが設置され、eスポーツ大会の場としてだけでなく、eスポーツを軸にした教育やコミュニティ形成の場として、さまざまな可能性を秘めています。
2023年2月5日、「沖縄市ITワークプラザ」にて、「沖縄市e-sports festa 2023 ITワークプラザカップ」が開催される中、この施設におけるeスポーツを活用した地域活性への期待について、識者をお招きしお話しを伺いました。

ーはじめに、eスポーツがどのように国内で広がりを見せてきたか、教えていただけますか?

松本順一氏(以下、松本氏):「eスポーツ」はアメリカやヨーロッパを中心に2000年頃からその言葉が使われ始めています。アジアでいうと日韓交流戦が2008年に開催されています。一番の節目になったのは、2019年頃。「eスポーツ」が「スポーツ競技」として認められる動きが進み、政府の施策の一つとして盛り上がりが加速しはじめてきました。2019年には、韓国で開催された「第11回eスポーツ ワールドチャンピオンシップ」に日本代表も参戦するなど、eスポーツの国内プレイヤーの活躍も見え始めましたよね。

大森吉雄氏(以下、大森氏):そうですね。同年(2019年9月〜10月)の「茨城国体(いきいき茨城ゆめ国体)」も印象深いですよね。文化プログラムという位置付けでしたが、実質的なリアルスポーツと並んで都市対抗の日本一を決める大会として、現在も毎年開催されています。

ー世界から始まったeスポーツのムーブメントは、日本国内でも徐々にリアルスポーツと同じような扱いで盛り上がりをみせているのですね。eスポーツを通した地域活性として、どんな効果が期待できるのでしょうか?

大森氏:「eスポーツ」には、観光や産業の振興、高齢者の健康増進、子どもたちへのICT教育、デジタル人材促進、また世代を超えた交流促進など、多岐にわたるベネフィットがあります。例えば、若者の流出が課題となる地域では、若い世代をターゲットにした集客や地域の盛り上がりを目的にeスポーツ大会を開催し、周辺エリアを回遊させる仕組みをセットにして地域観光を盛り上げようという取り組みもあります。デジタルスタンプラリーや、アプリを活用した地域通貨などを併用した仕組みづくりで、課題解決にむけた人流分析や購買分析なども行なう事例も増えています。また最近では、福祉や高齢者の交流促進という目的でeスポーツが用いられている場合もあります。これまで交流のためのコンテンツとして用いられてきた、カラオケや体操教室などに、eスポーツが加わるイメージですね。例えばレーシングゲームだったりすると、男性の高齢者の方も楽しみながら交流ができたり…。eスポーツというコンテンツは、お孫さんと一緒に…とか、世代を超えて交流を楽しめる魅力もありますね。

ーリアルな場に集まらなくてもオンラインで参加できるeスポーツにおいて、
施設というリアルな場に求められていることとは?

大森氏:eスポーツは、インターネット回線さえあれば、どこにいてもリアルタイムに繋がれるというメリットがありますが、その一方で、リアルタイムで熱量が伝わりにくいという一面もあります。まだまだ、今のネットワーク環境では、盛り上がりのタイミングにタイムラグが生じてしまったりと、インターネット回線スピードや、伝送容量においてまだまだ進化の段階といえます。現在「IOWN」という、高速大容量通信ネットワーク構想が進んでいますが、これが実現していくと、離れた複数の地域同士が、タイムラグなしに相互応援できるので、離れた拠点にいても一体感を持って同じイベントを楽しむことができます。
そうなると、地域それぞれの拠点が非常に大切な要素になってくると思います。

複数拠点それぞれを「IOWN」のような高速回線で繋ぎ、結んだeスポーツ大会が開催される未来の世界では、参加者は一番アクセスしやすい拠点に足を運び、沖縄にいても東京・大阪・福岡など様々な都市とリアルタイムで繋がり、その楽しみを共有できる。参加者からしてみたら、アクセスの良さだけでなく、施設やその周辺エリアの魅力も併せて、自分がどこで大会に参加するかを選ぶ楽しみもある。そんな世の中が近い将来に実現していくことを考えると、それぞれの拠点が持つ魅力を、きちんと引き出し、特色を出していくのはとても大切ですね。

また、施設活用でいえば、eスポーツ施設にプログラミングや英会話などが学べる、ハイレベルな学童を備えた施設も存在しています。子どもたちだけでなく、企業間交流や高齢者交流など、まずはその施設周辺エリアのコミュニティを定着させていく。そしてインターネットの利点を活かし、他のエリアにある施設との交流を繋げていくことでコミュニティの広がりが加速化し、さらなる活性化に繋がっていくと思います。

松本氏:最近では映画館でも、応援鑑賞として、声をだして楽しむ企画を立ち上げているところもありますよね。その場所に集まる価値が何であるか…ということがキーになってくると思います。その施設や環境の使われ方、そこに集まりたいと思うきっかけづくりや、再び訪れたいと思う仕掛けづくりを重要視することで、継続的な集客につながっていきます。

今のデジタルネイティブ世代はオンラインや、オフラインを上手に使い分けていますよね。リアルな場で集うこともするけれど、オンラインの活用もとても上手。きちんとそれぞれのメリットを使い分け、ITリテラシーがとても高い世代だと言えます。そうした世代に向けて、eスポーツで使われる高性能PCなどを活用して、ハイレベルなプログラミング教育を提供するなど、子どもたちのICT教育や、デジタル人材育成の促進などの可能性も広がります。

その点、沖縄市ITワークプラザは、CG編集を担う企業の拠点施設でもありますし、将来的に実践力となる人材を育てる場として可能性は大きいと感じます。地元に熱量がある人を発掘し、地域から発信していく。そしてそれを応援していくという仕組みづくりが、地域の底力になっていくと感じています。

「沖縄市ITワークプラザ」を拠点に、地域交流が生まれ、IT人材を育成する場に

沖縄市ITワークプラザは、3Dモーションキャプチャースタジオを備えた、沖縄市が運営する共同利用型インキュベート施設。施設には、CG制作などに携わるIT企業も在籍しています。2022年の改修に伴い、1Fの共用スペースに高速インターネット回線のゲーミングPCや、長時間座っても疲れにくいゲーミングチェアを完備しました。また、会議室や集中ブース、WEBミーティングに最適なスペースなども備えており、コワーキングや、ワーケーションでの活用に最適です。
今後、この施設を活用したeスポーツ大会の実施、またeスポーツというコンテンツを用いた地域交流や、IT人材の育成など、沖縄市ITワークプラザを活用した地域の盛り上がりが期待できます。

大森吉雄氏

株式会社NTTe-Sports
代表取締役副社長

eスポーツを活用した、地域課題の解決や価値の創造を目指し、地域自治体や企業とともに地域ベネフィット実現に向けた事業を展開。

松本順一氏

株式会社JCG 代表取締役CEO

米国の大学を卒業後、大手通信キャリアにてエンジニア、外資複数社でのキャリアを積む。2013年、JGCの前身であるeスポーツ大会の運営事業を立ち上げ、2017年株式会社JGCを発足。日本のeスポーツコミュニティを広め、 eスポーツインフラに貢献している。